
2年半前から平田舞台(平田大一氏が関わる舞台を勝手に総称してこう呼ぶ)を観てきた感想として、いつも観劇後は『素晴らしかった…!!』としか出てこない。
共通している平田舞台の感動はとてもシンプル。子ども達自らが質の高い音楽を奏で、ダイナミックに舞い踊り、ひたむきに演じきったときに押寄せてくるとてつもない一体感だ。

ただ、その結果何も書けないのもどうかと思うので、自分なりにポイントをしぼった感想を。
【2】気になる主役の玉城朝薫役、本公演が最後になる卒業生たちの演舞は?
【3】新作として、歌(演奏)、踊り、演技(物語)の印象は?(総評)
【1】オリジナル版からどう変わったのか?
オリジナル版「燃ゆる首里城」(最新2008年8月公演)

その衝撃と主役のカリスマ性、阿麻和利とはかなりテイストの違う面白さ等々に引き込まれ、平田舞台では初めて2日連続で観て、多いに楽しんだ舞台だった。
対して今回の「外伝 朝薫伝」
観劇後の印象としても、オリジナル版を忘れそうになるぐらいかけ離れた固いテーマ。もし共通点を挙げるなら、首里城を舞台にしてるぐらいではないか…(?)
マブヤーの“オリジナル”と“外伝”以上に違う!と言えば、どれぐらいかけ離れてるか感じとってもらえるだろうか(知ってる人しかわからん☆)
そこで、これだけ違うなら外伝と言わず、まったく新しい作品(タイトル)とした方が良かったのではないか?
という思いがふつふつと湧き上がってくる。(きませんか?)
では、なぜ外伝という位置づけになったのか…
(以下憶測)
おそらく、こういことでないかと思う。
まず「首里城」が大きな意味を持つ舞台である必要があり、時間的制約がある中でこうするメリットが大きいと感じたから。
もう少しかみ砕くと…
那覇の舞台は今後の大きな目標として、首里城公演を掲げているそうだ。(それを打ち出したのはやはり、平田さん?)
あの首里城で、平田舞台の公演!!?
これを実現させるのは並大抵ではないはずで、実現すれば平田舞台の歴史においても過去に例を見ない、象徴的な一大舞台になることは間違いない。
そのために、タイトルに「首里城」を掲げる必要があった。
そしてこの目標が決まったタイミングでは本公演までの準備期間があまりなく、まったく新しいタイトルを練り上げている時間はない。
ならば、従来の舞台の発展的アナザーストーリー(外伝)と位置づけることで、これまでの実績を強調しつつ、首里城公演にふさわしい、格調高い新しいテーマ&物語を提示していくべきだろう☆
…という流れではなかったか。
他にも諸々の事情や経緯があるかもしれないが、大筋はこのような経緯だったのでは、とにらんでいる。
…まぁそんなこと、舞台を楽しむ上でどうでもいいことじゃないか!?と言われたらその通りなので(笑)
ここはこれぐらいにして次へいこう(弱気)
【2】主役、卒業生たちの演舞は?

今回の朝薫役を見て、那覇のリーダーであり看板俳優になりつつあることをあらためて実感した。
主役らしく堂々としながらもピュアな誠実さが伝わってくる、気持ちのいい演技だった。
(あきらかな余談……今回の主役メイク顔が、遠くから見ても近くから見ても草○剛そっくりで…気になってしまった)
しかし今回、何よりも特筆すべきは赤犬子(あかいんこ)役の彼女。
阿麻和利の賢勇役がハマり役だった女子同様に、実に気迫溢れる男役がハマっている女子という印象だったが、この赤犬子は本当に素晴らしかった。(赤犬子の人物像としてどうなのかはよく分からないけれど…謎の人物?だしね)
「赫き城の詩」にからんでくる口説(クドゥチ)が絶品で、これほど馴染むのか!と驚くほどカッコよかった。ほかのシーンでも三線の音色、歌声に聞き惚れた。その存在感たるや三線の始祖としての風格充分!
これほどまでのハマり役が、今回限りというのが…実に残念!
そして最終公演で主要3役を務めた高3女子トリオ。
オリジナル版で主役だった彼女が今回、尚敬王を演じていたが、今回は抑えた演技で主役をサポートしていた。名実ともに那覇の看板女優だった彼女がこうして卒業するということは、さみしい反面、那覇の舞台が大きく変わっていく新年度の幕開けを実感せざるを得ない。
しかし昨年10月の「那覇センセイション」で観た高2以下の役者たちも実に魅力的だったから、次世代のリーダークラス、看板女優&俳優候補はたくさんいるはずだ。
今回の舞台では主役の朝薫のモノローグが多く、俳優陣の出番が少なくてここ!という見どころは少なかったので今後に期待大。
【3】歌(演奏)、踊り、演技(物語)は?

充実を示す根拠の一つは、中心となる女性ボーカルが実に魅力的なこと。
声の美しさはもとより、情感に訴えるソウルフルな歌いっぷり、驚くべき安定感など、この那覇舞台に与える影響は計り知れない。
その一方で、男性ボーカルが多少あぶなっかしく感じるのはご愛嬌★
不思議なバランスというかそこに発展途上の高校生らしさがにじみ出て、平田舞台の真髄で言うところの思い切りの良さも感じられて好感が持てる。
バックの演奏陣も大したもので、六弦ベース(!?)を操る彼の音などは低音部の安定感とすごみを感じさせ、ドラムや太鼓とあいまってバンドに力強い迫力をもたらしていた。
阿麻和利のCD(きむたかバンドの演奏)を聴いていてつくづく思うのは、平田舞台の感動の大きな立役者に、楽曲の良さがあるという事実で、奇跡の楽曲と言っても過言じゃないぐらい素晴らしい。
詞も曲も平田大一さんが作っていること自体が驚きだけれど、この10年の中で関わってきたバンドメンバーのアイディアで熟成されてきた成果でもある思う。
そんなきむたかバンドの演奏同様、聞き応え充分な那覇舞台のバンド(名前はなかったと思う…)は、音楽監督として阿麻和利の卒業生が務めているのもうなずける。
今後がますます楽しみで仕方ない。
今回のアンケートには「CDを出してほしい!」と書くのを忘れたが、那覇舞台でもぜひバンドメンバーのCDを出して欲しい。手作りCD−Rレベルのものでも諸事情が許されるなら買いたいと思う。(赤犬子の口説も入った「赫き城の詩」もぜひ!)
踊り(アンサンブル)の最高峰もやはり阿麻和利だとは思うが、那覇の子達も見るたびにパワーアップしてきているのが感じられる。
インストラクターとして指導にあたっている阿麻和利卒業生のDNAが注入されてきているのかもしれない。
今回も最後のダイナミック琉球が完全燃焼!で力を出しきって踊っているのが伝わってきた。
そして、演技(物語)…
これについては今回の舞台ではまだまだこれから、イントロダクションという感じで演技シーンそのものが少なかった。ここから話を膨らませたい!というところなんだろうな、と思いながら観ていた。
そういう意味では現在進行形の舞台であり、これからどう発展していくのか…とても興味深い。
── 舞台の仕上がりも含め、首里城公演実現の為には大人たち、子どもたちの力を結集して乗り越えていかなければいけないハードルがたくさんあるだろう。
一観客としてもその実現に向けて微力ながら応援していきたい。
新年度の那覇舞台からも、目が離せない。